東法人会 94号
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文化探訪   シリーズ⑪公益社団法人岡山県文化連盟前専務理事 曽田 章楷 京都にある同志社大学経済学部には保護者会(役員会)があり、子供たちが卒業してからは「同窓会」として全国各地で親睦を深めてきましたが、今回は岡山が当番となり、昨年11月中旬、私たち夫婦で12名のお世話をさせていただきました。前日に大原美術館に代表される倉敷美観地区を巡った後、城下のコンフォートホテルで一泊し、翌日は後楽園を案内。 その前に先ず、全国的には珍しい岡山市立オリエント美術館をご紹介しました。美術館は1979年竣工。設計者は最高裁判所庁舎なども設計した、公共建築のスペシャリストの岡田新一氏。近くにある1988年竣工の岡山県立美術館も設計しています。美術館建設は安原真二郎氏から寄贈された1947点の古代オリエント美術品が契機でしたが、今では、4800余点の考古美術品を管理し、西日本におけるオリエント研究の拠点として名を馳せています。美術館を代表する収蔵品は、平成16年に開館25周年記念事業の一環として取得した「有ゆう翼よく鷲しゅう頭とう精せい霊れい像ぞう浮うき彫ぼり」で、一行は四角隆二学芸員の詳細な解説に感嘆した後、知る人ぞ知る穴場の喫茶「イブリク」でアラビックコーヒーを味わいました。アラビックコーヒーは煮出したコーヒーの上澄みを飲むスタイル。飲み終えた後は沈殿して残った粉を使った占いができるとか。 次いで、七五三参りで賑わう岡山神社から鶴見橋を経て夢二郷土美術館に向かいます。『川向こうに見える後楽園のうっそうとした緑の木々と、川面のきらめきと、古風な欄干のデザインが視界に入ったとき、何となくこの橋が好きになった。それが鶴見橋だった。(原田マハ著「でーれーガールズ」より』 後楽園バス停近くには、竹久夢二作詞の「宵待草」の歌碑があり、「待てど暮らせど…」を口ずさみながら美術館へ。夢二生誕100年を記念して1984年に開館した本館は、2007年、ミシュランガイドで一つ星にランク付けされています。夢二紹介のビデオを見た後、夢二の描いた掛け軸、屏風、絵画、版画、スケッチ、デザインなどを興味深く鑑賞。夢二の画家、詩人、デザイナーなどの多彩な才能に驚嘆しました。美術館東側には新設されたミュージアムショップがありますが、岡山県立記録資料館(前)館長の在間宜久氏によると、このあたりが西大寺鉄道(ケーベン)の後楽園駅のあったところです。 因みに、夢二郷土美術館の分館が瀬戸内市にあります。分館は邑久町で生まれ、16歳まで過ごした「夢二の生家」と、夢二が東京で建て復元された「少年山荘」からなり、夢二の世界を深く知ることができます。岡山市立オリエント美術館鶴見橋「宵待草」の歌碑夢二郷土美術館(その2)--11

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