東法人会 92号
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文化探訪   シリーズ⑨公益社団法人岡山県文化連盟アドバイザー 雄町の冷泉龍之口八幡宮備前国総社宮賞田廃寺跡曽田 章楷 岡山市中区祇園にある龍ノ口山の一帯は古くから栄えたエリアです。中央(畿内)から派遣された国司が政務を行う官庁の「国庁」があり、国庁を中心として計画的に整備された地方都市「備前国府」がありました。現在でも「国府市場」という由緒ある地名が残っていますね。周辺には備前国128神社(北は旧赤磐郡吉井町、東は和気郡・旧邑久郡、南は玉野市・小豆島、西は岡山市北区一宮)を合祀する「備前国総社宮」があります。また、岡山県内で最古の古代寺院の一つ「賞田廃寺(昭和47年3月16日国史跡指定)」や「幡多廃寺(昭和19年11月7日国史跡指定)」があり、礎石が残存しています。賞田廃寺跡は西塔,東塔や金堂跡が分かるように整備され往時の繁栄がしのばれます。 ここから徒歩で龍ノ口山(標高257m、岡山県百名山の一つ)の山頂までは約45分、更に山頂から龍之口八幡宮までは約20分。龍之口八幡宮では進学祈願をはじめ、家内安全、商売繁昌、安産等の祈願が執り行われていますが、特にこの時期は目指す進学校に合格を祈願する多くの参拝者が集い、緊張感が漂います。 賞田廃寺跡南側の用水には国指定天然記念物の「アユモドキ」が生息し、ボランティアの皆さんによって保護活動が行われ、賞田町内会は「淡水魚保護宣言の町」との看板が立っています。また、祇園用水や後楽園用水が流れ込む今在家地先は、ホタルの名所になっています。 賞田地域から少し南、JR高島駅北東に雄町(おまち)地域があります。雄町米の発祥の地です。雄町米は全国に名高い岡山県特産の最高級の酒造好適米です。丈が長いため倒伏しやすく栽培しにくい米で、生産量は減少していましたが、優れた品質が見直され、作付面積は増えつつあるようです。 雄町地域はまた旭川の伏流水が湧出した名水「雄町の冷泉」で有名です。江戸時代の貞享3年(1686年)に池田綱政によって整備され、池田家の御用水となっていましたが、現在は源泉から水を汲むことはできません。このため、岡山市が水汲み場などを備えた公園「雄町アクアガーデン」を整備し、憩いの場になっています。 私たちは恵み豊かな自然環境や優れた景観、文化財、風土を持続可能な形で次の世代に確実にバトンタッチしていく責務があります。龍ノ口山一帯はその責務を思い起こさせ、明日への活力を醸成するパワースポットではないかと思っています。--11

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