岡山東 №105
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何かないかな? 歩いて探そう旧岡山市内その⑥版画家 川瀬巴水の想い…岡山の今と昔を訪ねて 『元石関小僧』こと三村康彦です。今回は『版画家 川瀬巴水(かわせはすい)』の版画に見る岡山を探訪します。川瀬巴水は明治維新後に一度すたれた「日本版画」を明治から昭和にかけて再興し、江戸期の葛飾北斎に代表された「風景版画」を、新しい視点と感性で再び世に送り出した稀代の版画家です。 川瀬巴水は岡山へ画行に訪れており、大正期の岡山城付近を題材に作品を残しています。いくつかの作品を現在の風景と重ねてみましょう。大正11年作 『岡山城』 川瀬巴水 写真は、後楽園月見橋口より東へ50㍍の展望エリアから、令和4年10月の撮影です。 後楽園外周路南側には岡山城を眺める映えスポットがあり、川縁から数メートル上がった場所に展望エリアが整備されています。 当時は京橋辺りが海路物資の集積場でした。米・木材・魚市場・石炭コークスなどの商家が多くありました。そこから上流部へ物資の水路運搬往来は高瀬舟でしたので、その様子も版画にあります。現在の月見橋辺りはピンク色の桃型足こぎボートがのんびりと水上散歩しています。昭和30年作 『岡山城之朝』 川瀬巴水 写真は、後楽園南門月見橋口の橋のたもと茶屋付近から岡山城を眺めた、令和2年10月の撮影です。 この作品は枝越しに東方面から紅く染まった岡山城で季節は冬の明け方のようです。構図的には茶屋の上段から樹枝越しにスケッチされたのでしょうか。 川瀬の活動年表を見ると昭和3年(45歳)1月に中国・四国・九州へ画題を求めて旅行したとありますので、岡山へは1月の初旬に訪れてこの原画を描いたと思われます。大正12年作 『岡山内山下』 川瀬巴水 写真は、内山下小学校南の旧石山門跡(写真奥はRSK社屋)を南から令和4年10月の撮影です。 画題が『岡山内山下』とありますが、雨中の国宝の石山門がその場所と思われます。写真の石垣は、岡山大空襲で焼失した『国宝石山門』の石垣で、版画の左奥は旧内山下小学校となった石垣でしょう。 雨の中着物姿の女性が二人して石山門へ歩いていきます。石山門の前にたたずむのはおそらく警官でしょう。黄色の合羽の裾から警棒らしきものが見えます。川瀬巴水の作品は他に2作品岡山市内を題材にしているものがあります。またの機会にご案内いたします。『岡山後楽園』    昭和9年2月20日 写画  同年11月版画作(現後楽園延養亭前)『岡山乃かねつき堂』 昭和29年版画作(現表町二丁目オランダ通) 後楽園外周路 『岡山城』 月見橋 後楽園口たもと 『岡山城之朝』 旧 国宝 石山門跡 『岡山内山下』 15

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