岡山東 №100
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令和3年度税制改正に関する提言(要約)Ⅰ 税・財政改革のあり方 1.新型コロナウイルスへの対応と財政健全化 新型コロナにより、資金力の弱い中小企業は限界にきている。その経営実態等を見極めながら、雇用と事業と生活を守るための支援策を引き続き講じていく必要がある。また、コロナ禍の収束を見据えて、税制だけでなくデジタル化への対応や大胆な規制緩和をスピード感をもって行うなど、日本経済の回復に向けた施策を講じる必要がある。なお、財政健全化は国家的課題であり、コロナ収束後には歳出・歳入の一体的改革に入れるよう準備を進めることが重要である。 2.社会保障制度に対する基本的考え方 持続可能な社会保障制度を構築するには、適正な「負担」を確保するとともに、「給付」を「重点化・効率化」によって抑制することが必須である。また、社会保障は、「自助」「公助」「共助」の役割と範囲を改めて見直すほか、公平性の視点も重要である。 3.行政改革の徹底 地方を含めた政府と議会は「まず隗より始めよ」の精神に基づき行政改革を徹底しなければならない。 4.マイナンバー制度 マイナンバー制度は、マイナンバーカードの普及率が低いなど、国民や事業者が正しく制度を理解しているとは言い難い。それは今般の新型コロナ対策でも給付金申請手続きの混乱などで明らかになった。政府は制度の意義等の周知に努め、マイナンバーカードを活用する仕組みづくりに本腰を入れる必要がある。Ⅱ 中小企業が事業継続するための税制措置 1.法人税関係 中小企業は地域経済の担い手であり、我が国経済の礎である。グローバル経済や厳しい環境変化に対応し、その存在感を維持できるような税制の確立が求められる。新型コロナ拡大による深刻な影響、自然災害による被害など中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、事業を継続していくための税制措置の拡充等が必要である。  ⑴ 中小法人に適用される軽減税率の特例15%の本則化、適用所得金額の引上げ ⑵ 「中小企業投資促進税制」、「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置」の拡充、本則化 ⑶ 「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」の延長、拡充等 2.消費税関係 昨年10月に導入された軽減税率制度は事業者の事務負担が大きいうえ、税務執行コストの増加など問題が多い。このため、かねてから税率10%程度までは単一税率が望ましく、低所得者対策は「簡素な給付措置」の見直しで対応するのが適当であることを指摘してきた。国民や事業者への影響、低所得者対策の効果等を検証し、問題があれば同制度の是非を含めて見直しが必要である。 ⑴ 現在施行されている「消費税転嫁対策特別措置法」は、令和3年3月末日をもって適用が終了する。同特別措置の適用期限を延長するとともに、中小企業が適正に価格転嫁できるよう対策をとるべきである。 ⑵ 令和5年10月からの「適格請求書等保存方式」導入に向け、令和3年10月より「適格請求書発行事業者」の登録申請が始まるが、現行の「区分記載請求書等保存方式」を当面維持するなど、弾力的な対応が求められる。 3.事業承継税制関係 我が国企業の大半を占める中小企業は、地域経済の活性化や雇用の確保などに大きく貢献している。中小企業が相続税の負担等によって事業が承継できなくなれば、経済社会の根幹が揺らぐことになる。平成30年度の税制改正では比較的大きな見直しが行われたが、さらなる抜本的な対応が必要と考える。 ⑴ 事業用資産を一般資産と切り離した本格的な事業承継税制の創設 ⑵ 相続税、贈与税の納税猶予制度の充実 4.地方税関係 ⑴ 固定資産税の抜本的見直し  ⑵ 事業所税の廃止 等Ⅲ 地方のあり方 今般の新型コロナウイルス拡大は、東京一極集中のリスクを浮き彫りにする一方、地方分権化と広域行政の必要性も改めて問いかけることになった。そもそも地方分権化は国と地方の役割分担を見直し、財政や行政の効率化を図ることであり、地方活性化の観点からも重要であることが指摘されてきた。これを機に分権化の議論がさらに高まることを期待したい。--13

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